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オオニシ恭子の薬膳日記

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オオニシ恭子の艸ものがたり・セブン ボーイズ




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セブンボーイズ

 僕たちのママはとても綺麗だった。紫色の髪の毛にいつも薄紫色の花びらのような帽子をかぶって風にひらひらゆれて、ママの顔は白く艶やか、いつも微笑んでいるような口元はやさしさにあふれていた。
僕たちは七人の兄弟で、クッシォンのきいた柔らかなベットにならんでいた。そして太陽が暖かくとてもここちよかった。僕はいちばんチビで端に寝ていた。





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 ところが、あの日、そうなんだ、あの日、狂ったような風が吹き荒れて、ママのぼうしが飛んだんだ。僕たちも何が何だか分からないほど揺れて、「ママ!」と叫んだ時、ママの「大丈夫よ、しっかり生きていくのよ」という声が遠くなっていったと思ったら、風に飛ばされ、そのあとドスーンという感じがして、
ゆらゆら揺れたり揉まれたりしたんだ。


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 どうやら、僕たち豆っこボーイズは雨風にほんろうされて川を流れていたんだ。どこへ行くのか不安だったけれども、僕たちのさやベットはボートになってどんぶら、どんぶら流れていた。「もう運を天にまかせているしかない」とお兄ちゃんが言ったとき、ドーンという音がして僕たちのボートは宙返りした。
そしてまたドーンと音がして、ボートが壊れ、僕たちはさやボートからほうりだされたんだ。いちばん大きいお兄ちゃんが「みんな、しっかりしろ、僕たちはここで生きるんだ、しっかり地面にくっついていればいいんだ」と叫んだ。ぼくは疲れてねむってしまった。

 ぽかぽか暖かい日差しを感じて目がさめると、お兄ちゃんたちがあちらこちらにいたので安心したけれど、からだが少しむずむずして、逆さになっていて、「ママはどうなったかな、」とおもって泣いてしまった。するといちばん大きなお兄ちゃんが、「チビ、泣くな、俺たちはここで生きるんだ、しっかり、地面に根を生やし太陽の方に顔をあげるんだ」と言った。
 お兄ちゃんたちはどんどん大きくなって双葉からさらに大きな葉に変身して行き二番目のお兄ちゃんも双葉を生やしたり、毎日お兄ちゃんたちが変わっていくのがわかった。ぼくはやっと地面に根をつけることができたが、まだ兄ちゃんたちのようにはいかない。壊れたぼくたちのボートがひからびてぼくのそばにある。もう、もどるところもなく、ママにも会えない。


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by kyoko-yakuzen | 2015-01-19 16:49